AGAとは?原因や仕組み、薄毛の進行パターンや治療法に関して

AGAとは

AGA(男性型脱毛症)とは?

AGA(エージーエー)とはAndroGenetic Alopeciaの略称で、男性型脱毛症の意味です。

AGA(男性型脱毛症)は20歳以上の成人男性に良くみられる進行性の抜け毛や薄毛の症状です。主に遺伝的な要因から思春期以降比較的早い時期に発症し、額の生え際や頭頂部の髪がどちらか一方、または双方から薄くなっていきます。現在では薄毛や抜け毛の症状に悩む男性のほとんどがAGA(男性型脱毛症)であるともいわれています。

AGA(男性型脱毛症)は進行性の症状で、下記の図の様に額の生え際や頭頂部のつむじ周辺か徐々に抜け毛が増え始め薄毛が目立つようになり、典型的な薄毛症状の経過としては額の生え際の後退により特徴的な「M字」型パターンの額となります。また、頭頂部の毛髪も細くなり、頭頂部全体の毛髪密度が低下する「O字」パターンの薄毛が見られる事があります。

AGA(エージーエー)の典型的な薄毛症状の図説


この様に、AGA(男性型脱毛症)が発症した場合には、抜け毛や薄毛が時間の経過と共に症状が進行する為、何らかの治療を施さない限りAGA(男性型脱毛症)の薄毛の症状の進行を食い止めることは出来ません。その為、出来る限り早い段階で病院で医師の診察及び治療を受けることを推奨いたします。

AGAのセルフチェック

まず薄毛に悩む方が最初に気になるポイントとして、自分の薄毛はAGAなのか否かという点です。医師の診察を受けることが一番精度の高い確認方法であることは間違いありませんが、自らでAGAか否かを簡易的にセルフチェックをする方法もあります。以下の項目に複数当てはまった方は、既にAGAを発症している可能性が高いです。

  •  ・抜け毛の量が増えたと感じる
  •  ・5年前の自分と比べて額が広くなってきた
  •  ・つむじの地肌が目立つ
  •  ・髪の毛のハリやコシがないと感じる
  •  ・髪の毛が細くなった
  •  ・全体的にボリュームが減った
  •  ・血縁関係(特に母方)の親戚に薄毛の方がいる

薄毛の原因がAGAか否かで治療の方針や方法が大きく異なる為、複数項目が当てはまった場合には、まずは最寄りの皮膚科やAGAクリニックで医師の診察を受けAGAであるか否かの正確な診断を受けましょう。

AGAの仕組みとは?

AGA(エージーエー)の仕組みは主に遺伝的な要因によって男性ホルモンが毛髪に働きかけ、毛髪が正常な毛周期(ヘアサイクル)を営めなくなる為に発症します。そこで正常な毛周期(ヘアサイクル)とAGA(エージーエー)の毛周期(ヘアサイクル)とを比較して解説していきます。

AGA(エージーエー)の仕組み 毛周期(ヘアサイクル)の図説


■ 正常時の毛周期(ヘアサイクル)

AGA(エージーエー)になる前の一般的な毛周期(ヘアサイクル)とは、下記の通り3つの状態からなる頭髪の状態変化です。

1:成長期(約2年~6年)毛髪を生成する毛乳頭細胞が最も活発に活動し「太く・長い」毛髪が育つ期間。
2:退行期(約2週間)毛乳頭細胞が毛根深部に小さく退縮し、毛髪の伸長が低下する期間。
3:休止期(約3~4ヵ月)毛乳頭細胞が活動を止め、成長を停止した毛髪が脱落する期間。

1つの毛穴から出る人の毛髪はこの毛周期を40~50サイクル営んだ後、完全にその細胞分裂を止めることが解っています。

■ AGA(エージーエー)の毛周期(ヘアサイクル)

AGA(エージーエー)になると、毛周期の「成長期」の毛髪に作用し、通常は成長期の期間である約2年~6年を徐々に1年から約数か月という期間に短縮してしまう事がわかっています。

成長期の期間が短縮することで毛周期(ヘアサイクル)自体のサイクルが早くなる為、抜け毛の量が増えていきます。また、本来は長く・太い髪に長期するはずの毛髪が「短く」「細い」状態で成長が止まってしまうので、頭皮を髪の毛がしっかりと覆うことが出来なくなる為、前頭部の額の後退や頭頂部の毛髪の密度低下を引き起こし、薄毛の症状が顕著化していきます。

なお、こうしたAGA(エージーエー)により毛周期(ヘアサイクル)の成長期の期間が短縮することによって毛髪が「短く」「細い」状態になることを毛髪の「軟毛化」や「ミニチュア化」と呼びます。

AGAの原因とは?

毛周期(ヘアサイクル)の乱れの原因は主に悪玉男性ホルモンの「DHT(ジヒドロテストステロン)」です。

このDHT(ジヒドロテストステロン)」は体内で最初から存在するのではなく、男性の体内では、主に思春期以降に生殖器や副腎皮質からの男性ホルモンの分泌量が増加する男性ホルモンを「テストステロン」という物質で存在しています。このテストステロンは男性らしい身体の成長や、生殖器の機能を維持するために必要不可欠な物質です。

AGAの原因とはの図説


20代~30代にかけてさらにテストステロンの分泌が活発となる時期に、主に男性の前頭部、口ひげ周囲、脇周囲に存在する「5α還元酵素」(5αリダクターゼ)と呼ばれる酵素によって、この部位にたどり着いたテストステロンが「ジヒドロテストステロン」(以下DHT)というAGA(エージーエー)の原因となる悪玉男性ホルモンに変換されます。

このDHTが毛根周辺のアンドロゲンレセプターと結合し、毛周期の「成長期」の毛髪に作用することで、通常2年から6年ある成長期の期間を約数か月から1年という期間に短縮してしまうシグナルを発信する事がわかっており、それにより成長期の期間が短縮すると、最も活動的で、長く・太い成長期の毛髪が減少すると同時に、相対的に「退行期」、「休止期」の細く短くミニチュア化した毛髪が増加する様になり、この変化が続けば主に前頭部の額の後退や頭頂部の毛髪の密度低下を引き起こします。この男性ホルモンDHTによる毛周期の乱れが、AGA(男性型脱毛症)の原因なのです。

AGAを引き起こす要因とは?

こうした毛周期(ヘアサイクル)の乱れを引き起こすAGA(エージーエー)の1つの要因としては「遺伝」が上げられます。

人の細胞の中にある遺伝情報である染色体は、男性が「XY」、女性は「XX」という組み合わせを保有しており男性は、母方のX染色体と父方のY染色体を受け継ぎますが、この母方のX染色体はAGAの発症に関与するアンドロゲンレセプターの感受性に関わる遺伝情報が含まれており、薄毛の遺伝子を持つことがわかっています。

ただ、あくまでAGA(エージーエー)における1つ要素や可能性を示唆するものであり、必ず母方が薄毛の家系だとAGA(エージーエー)が発症するという訳ではありません。

AGAの脱毛パターンとは?

AGAの症状には「パターン」と「進行度合い」により様々な分類に区分けされています。

この分類方法はアメリカのハミルトン医師が提唱し、のちにノーウッド医師が改定した「ハミルトン・ノーウッド分類」や日本人特有の頭頂部の薄毛のみが進行する「高島分類」、もしくは「ハミルトン・ノーウッド分類」と「高島分類」が組み合わされた物が一般的に広く利用されています。なお、女性は脱毛症の分類にはルードヴィヒ(Ludwig Classification)分類と呼ばれ、男性とは全く異なる分類法があります。

AGA(エージーエー)の仕組み 毛周期(ヘアサイクル)の図説


この様に一概にAGA(エージーエー)の症状といっても、その進行度合いや薄毛になる頭の部位によりパターンは様々です。またその状況により治療方法も異なる為、医師に診察を仰いだ上で症状の脱毛パターンやレベルを診断してもらいましょう。

ハミルトン・ノーウッド分類によるAGA進行過程

では、より詳しくハミルトン・ノーウッド分類によるAGAの進行過程を細分化して解説します。

ハミルトン・ノーウッド分類


画像中央のⅠ型からⅦ型へのAGAの進行は欧米人に多く、vertex型での薄毛の進行は日本人を含めたアジア人に多いAGAの進行過程です。上記で図説したハミルトン・ノーウッド分類によるAGA進行過程を詳しく以下から説明します。

分類 症状
Ⅰ型 AGAの初期症状。生え際が少し後退しているが、あまり見た目に変化がない状態。
Ⅱ型 Ⅰ型よりも生え際の薄毛が進行している状態で、見た目に変化が現れ始める状態。
Ⅱ型 vertex Ⅱ型に加え、頭頂部の薄毛がO型に進行し始める状態。
Ⅱa型 Ⅱ型に加え、前頭部の薄毛が進行している状態。
Ⅲ型 生え際の薄毛が進行してM字になっている状態。全体的な頭髪のボリュームも減少している状態。
Ⅲ型 vertex Ⅲ型に加え、更に頭頂部の薄毛がO型に進行して頭皮の露出が目立ち始める状態。
Ⅲa型 Ⅱa型より更に前頭部の薄毛が進行して生え際が後退し始める状態。
Ⅳ型 生え際が後退し、頭頂部がO型に薄くなっている状態。
Ⅳa型 Ⅲa型より更に前頭部の薄毛が進行して頭髪が残っていたM字の中心部分も薄くなっている状態。
Ⅴ型 生え際の後退がより進行した状態。同時に頭頂部も頭皮が完全に露出し始める状態。
Ⅴa型 Ⅳa型より更に前頭部の薄毛が進行して頭頂部の頭髪の毛も薄くなり始める状態。
Ⅵ型 生え際から頭頂部にかけて完全に頭皮が露出した状態。
Ⅶ型 頭頂部から更に後ろまで薄毛が進行して頭皮が露出した状態。

このハミルトン・ノーウッド分類の図説にある通りにAGAはⅠ型の症状から時間と共にⅦ型へ徐々に進行していく脱毛症なので、何れの進行パターンであっても、何かしら対策や治療などの手立てを打たなければ進行が止まる事も、急に改善するという事もなく、時間の経過と共に遅かれ早かれ個人差がありながらも着実に薄毛は進行していきます。

効果的なAGA対策と治療法とは?

AGAの症状には「パターン」と「進行度合い」により様々な分類に区分けされています。

では、この様にして引き起こされたAGA(エージーエー)に対して、どの様な対策や治療が効果的なのでしょうか。効果的な治療において下記のAGA(エージーエー)の2つの要因にしっかりとアプローチすることが重要です。

<要因1>
5α還元酵素の働きにより産生されるジヒドロテストステロンの毛周期への影響
<要因2> 毛周期の「成長期」が短縮する事によって引き起こされた多数の毛髪の脱毛やミニチュア化


AGA治療においては、この「2つの要因」に対する改善策が極めて重要になります。

要因1に対しては、5α還元酵素の働きを阻害し、ジヒドロテストステロンの産生を抑えジヒドロテストステロンの影響から毛周期を守る効果を持つ「フィナステリド」にて治療を行うことが一般的です。 DHTの「成長期を短縮する」作用を防ぎ、数年かけて毛周期の正常化をもたらす事で、「今後の」毛髪の脱毛やミニチュア化を防ぎます。毛髪の現状維持の為に予防的に使用する事も多い非常に重要な薬剤です。

要因2に対しては、既に脱毛し、ミニチュア化してしまった毛髪を正常の状態に戻す事が重要になります。要因1対策における「毛周期の正常化」を待っているだけのアプローチでは、進行した脱毛・薄毛の改善にかなりの時間(数年単位)を要しますので、この既に脱毛し、ミニチュア化してしまった毛髪には、毛乳頭細胞に直接作用する「より積極的な発毛・育毛治療」に使用する「ミノキシジル」にて治療を行うことが一般的です。

このように現在医療においては、AGAの症状が進行している場合、フィナステリドでAGAの進行を抑制しながらミノキシジルの外用薬を併用し、発毛を促す方法が一般的治療とされています。銀座総合美容クリニックでの治療法と治療方針は下記からご覧いただけます。

治療法



早期の対策がAGAに必要な理由とは?


AGA(エージーエー)は早期の対策が重要の図説


様々なところで、薄毛・AGAには「早期の対策が重要」と見聞きしますが、では何故、薄毛・AGAには早期の対策が重要なのでしょうか?

何となく「症状がひどくなる前に治療した方が良い」という事は直感的に分かりますが、その本当の理由は以下の様に「毛母細胞の寿命」と「毛髪の役割」という二つの観点から説明することが出来ます。

■ 毛母細胞の寿命

毛髪はすべてヘアサイクル(毛周期)という成長期、退行期、休止期という三つの状態変化を営んでいます。この中で特に髪の寿命にとって重要なのが成長期(頭 皮の表面で毛髪が最も活動している時期)です。健常な状態ではこの成長期は2年~6年間有りますが、ジヒドロテストステロンの影響でこの成長期の期間が数カ月~1年という短期間に短縮してしまい、細く短いミニチュア化した退行期毛や成長を止めた休止期毛が増加する事がAGAの原因だとわかっています。

このヘアサイクルにおいて、次の新しい成長期は休止期の毛乳頭細胞が毛母細胞にシグナルを送り、隣接する毛母細胞が分裂を開始する事で始まります。分裂した 毛母細胞の一方は毛乳頭付近に残り、次の分裂に備えます。一方の分裂細胞は徐々に角質化し、毛髪を形成して行きます。つまり、髪の毛とは「分裂後に死んだ (角化)した毛母細胞の集まり」なのです。

ただし、このシグナルを受けた毛母細胞の細胞分裂も無限に繰り返される訳ではありません。ヒトの身体を構成する細胞は、生殖細胞など一部の細胞を除き、DNAに存在する「細胞分裂の回数券」とも言われる「テロメア」の働きによってその分裂回数には限界があります。ヒトでは細胞分裂の限界は約50回であり、毛母細胞も例外ではありません。毛乳頭細胞からシグナルを受けて分裂する回数にも限界があるのです。

成長期の期間が2~6年ある時は、毛周期を1回転する為に要する時間は最短でも2年以上になります。仮に毛母細胞の分裂が50回で打ち止め(=毛周期50回 転で打ち止め)だと仮定しても、2年×50=100年ですから、毛髪は100年という平均寿命以上の活動が可能になります。

しかし、AGAによって毛周期 1サイクルの期間が0.5年~1年と非常に短くなっている場合どうなるでしょうか。 0.5年×50=25年、1年×50=50年ですから、25歳~50歳 にかけて、沢山の毛母細胞が分裂不能となってしまい、毛周期を営めなくなってしまいます。

毛母細胞が分裂不能になってしまうと、どんな治療をしても毛髪の再生は不可能です。つまり、毛母細胞が細胞分裂が可能な内に短縮した毛周期を長くすることが最も重要なポイントとなります。ですから、AGA治療は毛周期がまだ回転の余力を残している内に、早めの対策をする事が重要なのです。

■ 毛髪の役割

毛髪は、一見外見を整える以上に何の役割も持っていない様に思えますが、実は紫外線や外部の刺激から頭部を守ったり、適度に皮脂を分泌して頭皮を良いコンディションに保つであり、毛母細胞も例外ではありません。毛乳頭細胞からシグナルを受けて分裂する回数にも限界があるのです。

AGA・薄毛が進行すると、これらの大切な毛髪の機能が果たせなくなってしまい、頭皮が紫外線で傷んだり、皮脂の分泌が過剰になったり頭皮の環境がどんどん悪化してしまいます。健康な毛髪は健康な頭皮無くして発育出来ませんので、AGAの進行が、さらにAGAを悪化させるという負のスパイラルを生み出すのです。この様な「毛髪の役割」という観点からも、AGAには早期の対策が重要です。

AGAについてのよくある質問

通院をしている患者様よりAGAについて良くある質問をご紹介させて頂きます。

  • Q:AGAの見分け方は?

    A:医師による診察を推奨致しますが、まずは自分でAGAの見分けたい方はセルフチェックを活用しましょう。
     ・抜け毛の量が増えたと感じる
     ・5年前の自分と比べて額が広くなってきた
     ・つむじの地肌が目立つ
     ・髪の毛のハリやコシがないと感じる
     ・髪の毛が細くなった
     ・全体的にボリュームが減った
     ・血縁関係(特に母方)の親戚に薄毛の方がいる

    チェック結果はこちらをご覧ください。


  • Q:AGAは発症したら終わりなのですか?

    A:基本的に男性型脱毛症は放置した場合には改善することはありません。また、進行性の症状である為、放置していると時間の経過と共に薄毛の症状は悪化します。しかし、AGA治療を行うことで薄毛の症状の進行を食い止め、更には髪を発毛させることが可能です。


記事監修医師

銀座総合美容クリニック 院長 正木 健太郎

【略歴】
平成14年 岡山大学医学部卒
平成20年 銀座総合美容クリニック 開院    

【所属学会】
日本形成外科学会 正会員
日本臨床毛髪学会 正会員
日本再生医療学会 正会員
日本美容外科医師会 正会員