2010年に発行された男性型脱毛症診療ガイドラインでは、女性の脱毛症をFAGA(Female Androgenetic Alopecia)女性男性型脱毛症と記していました。しかし女性の薄毛に関して研究が進むにつれてFAGA(女性男性型脱毛症)だけでは病態の違いが説明できなくなってしまったため、FPHL(female pattern hair loss)女性型脱毛症という新しい概念が生まれました。
現在では男性型脱毛症より「女性型脱毛症(female pattern hair loss)」という病名を用いることが国際的にも多くなってきている.以上のような病態の違いを考慮して,今回の診療ガイドラインでは病名として女性型脱毛症を用いることとした.
FPHL(女性型脱毛症)がどういったものなのか、またFAGA(女性男性型脱毛症)との違いなどの解説をしていきます。
FPHLとは
FPHL(読み方:エフピーエイチエル)とは、Female Pattern Hair Lossの略称で、女性型脱毛症の事を指します。女性型脱毛症とは女性が発症する脱毛症全ての症状を指し示す総称です。
その為、FPHLの中にはFAGA(女性男性型脱毛症)や円形脱毛症、牽引性脱毛症、分娩後脱毛症、頭皮のトラブルによる脱毛症などが含まれます。
なお、FPHLとFAGAは混同されがちな言葉ですが、明確な違いがあります。FAGAは女性ホルモンが減少し、男性ホルモンが優位になることで起こる脱毛症の症状で、FPHLは女性の脱毛症全体的な意味を指しているため、言葉の定義が異なります。
FPHLの女性の薄毛症状とは
FPHLに分類されている代表的な4つの女性の薄毛の症状に関してそれぞれ解説します。
FPHLの症状1:FAGA(女性男性型脱毛症)
FAGAとはFemale Androgenetic Alopecia(女性男性型脱毛症)の略称で、多くの女性の薄毛は、FAGA(女性男性型脱毛症)であろうと考えられてきました。しかし前述した通り、男性ホルモンだけでは女性に関する薄毛の病態が説明できないことも多いため、近年では女性の薄毛のことをFPHL、男性ホルモンによる脱毛症のことをFAGAと分けるようになりました。
FAGAは、AGA(男性型脱毛症)のように前頭部(生際)から頭頂部が局所的に脱毛するのではなく、頭部全体が薄くなっていくのが特徴です。いわゆるびまん性脱毛と呼ばれており、広い範囲でまばらに脱毛していきます。薄毛になっていく進行度合はルードヴィヒ分類によって、それぞれⅠ型~Ⅲ型に分けられています。
FAGA(女性男性型脱毛症)について詳しくはこちらをご覧ください。
FPHLの症状2:円形脱毛症
円形脱毛症とは、頭髪の一部または複数箇所が円形に脱毛してしまう疾患で、症状が重くなると、頭髪全体だけでなく、眉毛やまつげなど身体全域に及ぶケースもあります。肉体的・精神的なストレスによって、自己免疫機能に異常が発生することで発症するといわれています。自己免疫反応が頭髪で起こると、Tリンパ球と呼ばれる細胞が毛根を異物と誤認し、攻撃してしまうため脱毛症状が引き起こされます。
円形脱毛症について詳しくはこちらをご覧ください。
FPHLの症状3:牽引性脱毛症
牽引(けんいん)性脱毛症とはその名の通り、髪を引っ張ることで髪が抜ける症状です。長期間に渡り常に同じ箇所の毛髪や頭皮に負担をかけることで起きる脱毛症のことで、女性の場合はポニーテールなどで髪をきつく縛り続けることが原因になるケースが多いです。
牽引性脱毛症について詳しくはこちらをご覧ください。
FPHLの症状4:分娩後脱毛症(産後脱毛症)
分娩(ぶんべん)後脱毛症はその名のとおり、出産後に発生する脱毛症のことです。出産後にホルモンバランスが変動することで、ヘアサイクルの成長期の毛髪が一斉に休止期へ移行し抜け毛が急激に増えてしまう症状です。女性ホルモンであるエストロゲンは、ヘアサイクルの成長期を伸ばして一時的に抜け毛を抑える作用があります。その為、妊娠して体内のエストロゲン量が一時的に増加することで、本来抜けるはずだった髪の毛の成長期が伸び、抜け毛が減ります。
しかし、出産後は増加していた体内のエストロゲンが元の量に戻るので、妊娠時に一時的に止まっていた抜け毛が出産後に急激に抜け始める為、頭髪が薄くなる症状に見舞われます。
分娩後脱毛症(産後脱毛症)について詳しくはこちらをご覧ください。
ヘアサイクルについて詳しくはこちらをご覧ください。
FPHLの治療方法
FPHLの治療法はその症状により異なります。上記で解説したFPHLの代表的な4つの女性の薄毛の症状の治療法をそれぞれ解説します。
FPHLの治療法1:FAGA(女性男性型脱毛症)
FAGA(女性男性型脱毛症)の治療をする際、最も行われている方法は投薬治療で、スピロノラクトンとミノキシジルが用いられます。スピロノラクトンで抜け毛を減らし、ミノキシジルで髪の毛の成長をコントロールしている毛母細胞を活性化させて成長を促す治療方法です。
スピロノラクトンは5αリダクターゼを阻害する作用を持ち、ジヒドロテストステロンが毛乳頭細胞への脱毛のシグナルを妨げることで、抜け毛の予防に効果がある薬です。
スピロノラクトンについて詳しくはこちらをご覧ください。
また、ミノキシジルは頭皮に塗布する外用薬と飲み薬の2種類があります。ミノキシジルは、毛母細胞を活性化させて髪の成長を促すほか、血管を拡張する作用によって栄養を毛根まで届けやすくします。
ミノキシジルについて詳しくはこちらをご覧ください。
FPHLの治療法2:円形脱毛症
現代医療において円形脱毛症はいまだ根治できる治療法が確立されていません。その中で、円形脱毛症診療ガイドライン(2017年版)では、推奨度B(「行うように勧める」)として、「ステロイド局所注射療法」「局所免疫療法」「ステロイド外用療法」「かつら」の4つの治療法が挙げられています。
円形脱毛症の場合、髪の毛の毛包の周囲に炎症細胞が集まっていることが分かっているため、炎症を抑えるステロイドが有効とされ、治療に使用されるケースが多いです。
参考:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
FPHLの治療法3:牽引性脱毛症
牽引性脱毛症は、髪の毛を引っ張ることで毛根に負担がかかり、抜け毛や血行不良による脱毛が起こる症状です。主な原因は、ポニーテールなどの髪型や習慣による物理的な刺激であるため、投薬治療よりも髪型や生活習慣の見直しが重要です。また、毎日ヘアアイロンを使用したり、エクステを装着したりしている場合は、髪や頭皮への負担が大きいので、症状が緩和するまでは控える必要があります。
FPHLの治療法4:分娩後脱毛症(産後脱毛症)
妊娠中に増加したエストロゲンによって止まっていた抜け毛が、出産後に一気に抜けることで頭髪が薄くなる症状ですので、あくまで一時的な症状です。およそ産後半年から1年程度の時間をかけて元のヘアサイクルの状態に戻る為、抜け毛の量や毛量も妊娠前の状態に徐々に戻ります。その為、直ぐに何か投薬治療を行うよりも、時間の経過とともに頭髪の状態が元に戻っているかなどの経過観察をすることが重要です。
なお、産後はホルモンバランスも不安定なので、極度のストレスを感じてしまったり、育児によってしっかりと食事が取れていないなどの場合には、分娩後脱毛症(産後脱毛症)とは別の理由で薄毛の症状が長引いてしまうこともあります。そのため、産後3ヶ月~半年で薄毛の症状が全く改善されない場合には一度、最寄りの皮膚科などで医師に相談をした方が良いでしょう。
FPHL(女性型脱毛症)の考え方
2017年に改定された男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインには、女性の脱毛症が男性ホルモンによる脱毛症だけでは説明ができなくなってしまったため、新しく女性型脱毛症という概念を生み出しました。
多くの女性の薄毛が、女性ホルモンが減少して男性ホルモンが優位になることで引き起こす脱毛症(FAGA)と言われています。しかしそれだけではなく、女性の脱毛の仕方はどの症状もびまん性(まばらに抜ける症状)であることが多いので、さまざまな疾患が考えられ、男性の薄毛の症状に比べて女性の薄毛は原因の特定が難しいとされます。
様々な女性の抜け毛や薄毛の原因や治療について詳しくはこちらをご覧ください。
問診だけでは原因が特定できず、医師が頭部を触る触診で原因がわかることもあれば、実際に治療を開始してその反応でやっと原因が特定できるケースもあります。その為、女性の薄毛治療は医師と二人三脚でしっかりと治療計画が立てられるクリニックで治療を行うことをおすすめします。
銀座総合美容クリニックでは「常に患者さん目線でのクリニック運営」「患者満足度のより高いAGAクリニックを目指す」をクリニックの運営理念に掲げ薄毛に悩む患者様と日々真摯に向き合っており、女性の抜け毛や薄毛の悩みについても治療をお受けしております。
