自毛植毛手術を検討する際に「FUT植毛」「FUE植毛」「ノンシェーブン植毛」など様々な植毛方法(術式)の種類をインターネットで目にする機会があるでしょう。しかし、医学的な専門用語であるがゆえに、実際にこれらの植毛方法にどんな違いがあるのか、メリットやデメリットを正確に把握することは非常に困難です。
AGA治療専門病院の銀座総合美容クリニックが、これら「FUT植毛」「FUE植毛」「ノンシェーブン植毛」が具体的にどんな植毛方法なのか、具体的なメリットやデメリット、費用感、そしてどんな方が適切な方法なのかも含めて医学的な見地から詳しく解説をしていきます。
植毛の概要についての詳細は下記のページをご覧ください。
まずは大枠として「FUT植毛」「FUE植毛」「ノンシェーブン植毛」について簡単に説明します。
- FUT植毛:Follicular Unit Transplantation(毛包単位移植)植毛の略称で、メスを使い後頭部の頭皮を帯状に切り取り、毛包単位(株)に切り分けてから薄毛部分に移植する方法です。別名ストリップ法とも呼ばれます。
- FUE植毛:Follicular Unit Excision(毛包単位採取)植毛の略称で、メスを使わずに専用のパンチ器具で毛根(グラフト)を採取し、それを薄毛部位に移植する方法です。
- ノンシェーブン植毛:FUE植毛をベースに本来毛根を採取する後頭部や側頭部は毛根採取のために手術前に髪を刈り上げますが、刈り上げずに、そのままの状態で毛根(グラフト)を採取して移植する自毛植毛の施術スタイルです。
- FUT植毛は帯状に頭皮を採る手術法
- FUE植毛は毛包を一株ずつ採る方法
- ノンシェーブン植毛は広範囲剃毛なし
- 傷跡と回復速度は術式で差がある
- 適切な術式は医師と相談して選ぶ
目次
植毛方法(術式)の分類について
「FUT植毛」「FUE植毛」「ノンシェーブン植毛」この3つの植毛法について、名前だけ見ると3つの異なる植毛方法(術式)のように見えますが、実際は分類(区分)が異なります。
- FUE植毛 / FUT植毛:毛包をどのような手法で採取するかという「手術方式」
- ノンシェーブン植毛:FUE植毛をベースに手術前に移植元の髪を刈るかどうかという「施術スタイル」
そのため、自毛植毛の植毛方法(術式)として捉えると「FUT植毛」「FUE植毛」の2種類という事になります。この事を理解した上で術式としての「FUT植毛」「FUE植毛」、施術スタイルとしての「ノンシェーブン植毛」がどのような植毛なのかを詳しく解説していきます。
自毛植毛手術の流れから「FUT植毛」「FUE植毛」の違いを解説
「FUT植毛」「FUE植毛」の違いを理解するために、それぞれを解説するよりも、自毛植毛手術の各ステップの中で、どこに違いがあるか、どこが同じかを把握することで理解が深まります。
自毛植毛手術の流れ
では一般的な自毛植毛手術がどのような流れで手術が進むのか、そしてその過程で「FUT植毛」「FUE植毛」で何が違うのかを紹介します。
【1】ドナー(毛包の採取元)部位を決める:「FUT植毛」「FUE植毛」共通
通常は後頭部か側頭部、もしくはその両方で設計します。これは男性の薄毛の要因として最も多いAGA(男性型脱毛症)の影響が最も少ない部位だからです。また、採取方法によっては、毛包を採取しやすくするためにドナー部の髪を短く刈る場合があります。
【2】ドナー部から移植用グラフトを採取:「FUT植毛」「FUE植毛」で異なる
FUT植毛の場合:ドナー部位となる後頭部か側頭部局所麻酔を行い、メスを使い細長い皮膚片(ストリップ)を採取します。その後、傷口を縫合します。このことからFUT植毛は別名ストリップ植毛と呼ばれます。
FUE植毛の場合:ドナー部位となる後頭部か側頭部局所麻酔を行い、メスを使わずに専用の直径0.7〜1.0mmの筒状の刃(パンチブレード)を使って丸くグラフトを採取します。メスを使わないため、傷口の縫合などは必要ありません。
【3】移植用グラフトを作製する:「FUT植毛」「FUE植毛」で異なる
FUT植毛の場合:顕微鏡で採取した皮膚片を毛包単位で取り出していきます。なお、FUT植毛はこの工程の精度が非常に重要とされています。なお、この過程で毛包を切断・損傷してしまうことをトランセクション(毛包切断)といい、損傷の程度によっては移植後の発毛に影響する可能性があります。
FUE植毛の場合:【2】の過程でグラフト単位にてパンチブレードで毛包を採取するので不要な過程です。なお、FUE植毛でも頭皮上で見えている毛の角度と、皮下で走っている毛包の角度が完全には一致しないなど様々な理由で、トランセクション(毛包切断)が起こります。
【4】グラフトの分類:「FUT植毛」「FUE植毛」共通
グラフトとは移植する単位の事です。毛包単位(Follicular Unit)は、1本だけの場合もあれば、2本、3本など複数の毛髪を含む場合がありますので、それらを分類します。これにより移植先にどのグラフトを使うかで、移植先の髪の密度をコントロールできます。
【5】移植部にスリット(細長い隙間)を作る:「FUT植毛」「FUE植毛」共通
移植先に、移植するグラフトの大きさや毛流れに合わせて小さな移植孔(スリット)を作ります。使用する器具や移植方法によって、スリットの作り方やサイズは異なります。
【6】グラフトを移植:「FUT植毛」「FUE植毛」共通
移植部に作ったスリットに採取したグラフを差し込みます。ここで非常に重要なポイントは、ただ沢山グラフトを埋めればいいという訳ではありません。移植先の髪の毛の「角度」「方向」「毛流れ」「密度」「生え際のライン」を見極め、違和感がないように移植元のグラフトを植え込んでいくという医師の技術が非常に重要な工程になります。
【7】手術後:「FUT植毛」「FUE植毛」共通
移植した毛髪は、基本的に移植元である後頭部・側頭部の性質を引き継ぐため、AGAの影響を受けにくいと考えられています。一方、移植していない既存毛ではAGAが進行する可能性があります。そのためAGAが進行すると、移植毛が残る一方で周囲の既存毛が薄くなり、移植部が孤立したような「離れ小島」のような不自然な状態になる可能性があります。そのため、移植していない既存毛のAGA進行を抑える目的で、適応に応じてフィナステリドなどのAGA治療薬を併用する場合があります。
AGAについての詳細は下記のページをご覧ください。自毛植毛手術の流れの図説
上記で解説した内容をもう少し分かりやすいように図説であらわします。

このようにFUT植毛とFUE植毛は、移植する工程そのものが全く異なるわけではなく、主にドナー部から移植用グラフトをどのように採取・作製するかが異なります。 FUT植毛では頭皮を帯状に採取して毛包単位に切り分けるのに対し、FUE植毛ではパンチを使用して毛包単位で直接採取します。その後の移植工程には共通する部分が多くあります。
では、具体的な工程からこれらFUT植毛とFUE植毛のメリット、デメリットも浮き彫りになりますので、それらを詳しく解説します。
FUT植毛のメリットとデメリット
前述した通りFUT植毛ではメスを使い後頭部や側頭部から毛髪を含む頭皮を帯状に採取し、その皮膚片を顕微鏡などで確認しながら毛包単位のグラフトへ分けていくのが特徴です。一度に多くのグラフトを必要とする症例では選択肢になりやすい方法です。
FUT植毛のメリット
一度に大量のグラフトを採りやすい
後述するもう1つのFUE植毛に比べ帯状にドナーを採取するため、大量のグラフトを採取しやすい手術法です。これは「前頭部から頭頂部までかなり広範囲に植えたい」という要望に応えることができます。
毛包を確認しながらグラフトを作製できる
FUTでは、採取した皮膚片を拡大視野や顕微鏡下で確認しながら毛包単位に分けていきます。毛包の位置や方向を確認しながら切り分けることができるため、適切に行われれば毛包を傷つけるトランセクションを抑えやすいという特徴があります。ただし、トランセクション率は術式だけで決まるものではなく、使用する器具や毛包の形状、術者・スタッフの技術などによっても大きく左右されます。
ドナー部全体を広範囲に採取する必要がない
FUE植毛では多数のグラフトを採取する場合、パンチブレードで後頭部から側頭部にかけて比較的広い範囲から毛包を分散して採取します。一方、FUTでは一定範囲から帯状にドナーを採取するため、FUEのように広範囲へ多数のパンチ痕を分散させません。将来的に追加植毛を検討する場合には、FUTとFUEそれぞれの特徴を踏まえて、限られたドナー資源をどのように利用するかを計画することが重要です。
FUT植毛のデメリット
後頭部に線状の傷跡が残る
FUT植毛で最も特徴的なデメリットが、頭皮を帯状に切除するため、縫合した部分に線状の瘢痕(傷跡)が残る事です。通常は周囲の髪で隠れる位置に作られるケースが多いですが、短髪や坊主など髪を短くすると傷跡が見える場合があります。また、傷跡の幅は手術方法だけでなく、採取する皮膚の幅、縫合時の張力、本人の体質や創傷治癒などによっても異なります。
術後の痛みやつっぱり感が生じることがある
FUTでは皮膚を切開し採取した後に、その傷口を縫合するため、FUEと比較して術後に痛みやつっぱり感が生じやすい傾向があります。一時的なしびれや知覚の変化が生じる場合もありますので、医師と細かく連携して対応していくことが重要です。
縫合と抜糸が必要になる場合がある
FUTでは皮膚を切開し採取した後に、その傷口を縫合するため、FUEと比較して術後に痛みやつっぱり感が生じやすい傾向があります。一時的なしびれや知覚の変化が生じる場合もありますので、医師と細かく連携して対応していくことが重要です。
FUE植毛のメリットとデメリット
前述した通りFUE植毛では、後頭部や側頭部の毛包単位を、小径のパンチブレードを使用して1グラフトずつ採取します。FUT植毛のように頭皮を帯状に切除する必要がないことが最大の特徴です。
FUE植毛のメリット
線状の傷跡が残らない
FUE植毛では毛包単位で小さく採取するため、FUTのような一本の長い線状瘢痕(傷跡)は生じません。そのため、髪を比較的短くすることが多い人にとっては大きなメリットになります。ただし、「傷跡がまったく残らない」という意味ではありません。グラフトを採取した場所には小さな点状の瘢痕が残る可能性があり、多数のグラフトを採取した場合には、短髪にした際に点状の色素低下や密度低下が目立つ場合がありますので、実際に手術を受ける際は担当医への確認が必要です。
FUT植毛と比較してドナー部の傷の回復が早い傾向がある
FUE植毛では帯状に皮膚を切除して縫合する工程がありません。そのため、抜糸などの処置も不要です。またそれぞれの採取孔は小さいため、一般的にはFUT植毛よりもドナー部の創傷が小さく、術後の回復も比較的早い傾向があります。
必要な場所から必要な量でグラフトを個別に採取できる
FUE植毛では、毛包単位で1グラフトずつ採取するため、ドナー部の毛髪密度や毛包の状態を確認しながら採取位置を分散させることができます。ただし、過剰に採取するとドナー部の密度低下や点状の瘢痕が目立つ可能性があるため、適切な採取密度を保つことが重要です。
FUT植毛とFUE植毛はどちらを選ぶべきか
ここまで解説したメリットやデメリットを踏まえどのような場合に、FUT植毛とFUE植毛を選ぶべきかを解説していきます。ただし、あくまで一般例なので、実際に自毛植毛を行う場合には担当医と相談しながら術式は選択する必要があります。
FUT植毛が最適な場合
多くのグラフトを確保したいケース
薄毛の部位が広範囲の面積で植毛手術を検討している場合には、多くのグラフトが必要になりますので、一度に多数のグラフトを確保しやすいFUT植毛が選択肢となります。
将来の追加植毛まで考えているケース
薄毛の範囲が広い場合やAGAが進行した場合、また髪の密度の調整など手術が1回で終わらないケースがあります。その場合にはドナー採取元を管理しやすく、採取面積が比較的限られるFUT植毛が最適です。
線状の傷跡を髪で十分隠せるケース
髪の毛を長くしている方であれば、FUT植毛の一番のデメリットとなり得る線状の傷跡を隠すことが出来ます。
FUE植毛が最適な場合
後頭部に線状の傷跡を残したくないケース
髪を比較的短くしたスタイルの方の場合には、どうしても傷跡が目立つ場合があります。術後しばらくは縫合部の赤みや傷跡が目立つことがありますが、通常は時間の経過とともに赤みが落ち着きますが、完全に跡が消えることはありません。
生え際やM字部分など限られた範囲への植毛を希望するケース
必要なグラフトを個別に採取できるFUE植毛は、生え際やM字部分など限られた範囲への植毛でも選択されます。ただし、植毛範囲だけでFUT・FUEの適否が決まるわけではありません。
術後の縫合や抜糸を避けたいケース
FUT植毛では、後頭部から頭皮を帯状に切除した後、採取した部分の傷口を縫合するので、術後は縫合部のつっぱり感や痛みが生じることがあり、縫合方法によっては後日抜糸が必要になります。一方、FUE植毛では小さなパンチを使って毛包を1株ずつ採取するため、採取部分には多数の小さな傷ができますが、通常は縫合せず自然に治癒させます。しかし、全く跡が残らないという訳ではないので注意が必要です。
FUT植毛とFUE植毛のおすすめタイプの図説
上記で解説したメリットとデメリットを含めどの様な方がFUT植毛とFUE植毛がおすすめなのかを、もう少し分かりやすいように図説であらわします。

このように、自毛植毛ではFUT手術とFUE手術は一長一短あり、どちらが優れているかという議論は適切ではありません。
- 自分のドナーを長期的にどのように使用するのが適切か
- 手術跡が自分の生活にどう影響するか
という視点で術式を選択することが重要です。
ノンシェーブン植毛とは
FUE植毛でドナー(毛包の採取元)部位から毛包を採取する際に、事前に髪を刈り上げることをお伝えしましたが、ノンシェーブン植毛はドナー部を広範囲に刈り上げず、既存の髪を残した状態でFUEによる毛包採取を行う施術方法です。具体的な剃毛方法や採取方法はクリニック・術式によって異なります。の毛を長いまま採取して移植する施術スタイルです。具体的にメリットとデメリットは以下の通りです。
ノンシェーブン植毛のメリット
植毛手術を受けたことを周囲に気づかれにくい
FUE植毛をベースにしているので、「FUTのような線状の切開や縫合を行わない」「ドナー部を広範囲に刈り上げない」の2点から周囲にバレにくいことが特徴です。ただし、術後には赤み、かさぶた、腫れなどが生じることがあるため、「必ず誰にも気づかれない」「ダウンタイムがない」という意味ではありません。
今の髪型を維持しやすい
髪を広範囲に短く刈る必要がないため、普段のヘアスタイルを大きく変えずに手術を受けやすいこともメリットです。特に女性など長い髪を維持したい人や、仕事上髪型を大きく変えにくい人にとっては利点になります。
ノンシェーブン植毛のデメリット
通常のFUEより手術に時間がかかりやすい
髪を短く刈る通常のFUE植毛では、採取する毛包やパンチを当てる位置を確認しやすくなります。一方、ノンシェーブン植毛では周囲の長い髪をかき分けながら、一つひとつの毛包を採取する必要がありますので手技が複雑になり、通常のFUEよりも手術時間が長くなる傾向があります。また、それに伴い大量のグラフトを必要とする植毛では1回の手術で対応しにくい場合があります。
費用が高くなる傾向がある
ノンシェーブン植毛は、通常のFUEより採取や移植に時間がかかり、医師やスタッフの作業量も増えます。そのため、通常のFUEと比べて手術費用が高く設定される場合があります。
自毛植毛方法(術式)のまとめ
自毛植毛の代表的な採取方法にはFUT植毛とFUE植毛があり、それぞれ傷跡の残り方やグラフトの採取方法、術後の回復などに違いがあります。また、ノンシェーブン植毛はFUE植毛をベースに、採取部の髪を刈り上げずに行う施術スタイルです。どの方法にもメリット・デメリットがあるため、どの手法が優れている、劣っているという議論は適切ではありません。必要なグラフト数やドナー部の状態、傷跡への希望、将来的な追加植毛の可能性などを踏まえ、医師と相談しながら自分に適した方法を選ぶことが重要です。
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