薄毛や抜け毛が気になり、「植毛とはどのような治療なのか」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
植毛とは、薄毛が気になる部分に毛髪を直接移植する治療法です。自毛植毛や人工毛植毛などの方法があり、それぞれ仕組みや特徴、メリット・デメリットが異なります。また、自毛植毛にも複数の術式があるため、費用や施術後の経過についてもあらかじめ知っておくと安心です。
この記事では植毛の仕組み、自毛植毛・人工毛植毛の特徴、術式ごとの違いまで詳しく解説します。
- 植毛の仕組みと自毛・人工毛の違い
- 自毛植毛の特徴とメリット・注意点
- FUE法・FUT法など術式ごとの違い
- 植毛にかかる費用と手術の具体的な流れ
- 植毛後の経過と失敗を防ぐためのポイント
目次
植毛とは?
植毛とは、薄毛や髪の毛が少なくなった部分に髪の毛やその代替品を直接移植する施術です。薄毛治療には内服薬治療などさまざまな方法がありますが、植毛は毛髪そのものを薄毛が気になる部分へ移植し、ボリューム改善を目指します。
植毛には大きく分けて、自分の毛髪を移植する「自毛植毛」と合成繊維で作られた人工毛を移植する「人工毛植毛」の2種類があります。現在は、自分の毛髪を使用する自毛植毛が主流です。
自毛植毛と人工毛植毛の違い
自毛植毛は自身の毛髪を移植するため拒絶反応が起こりにくく、移植後も周囲の髪の毛と同じように成長することが期待できます。一方、人工毛植毛では、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維で作られた人工毛を頭皮に植え込むため、術後すぐにボリュームアップを実感しやすいという特徴があります。
| 項目 | 自毛植毛 | 人工毛植毛 |
|---|---|---|
| 移植するもの | 自身の後頭部・側頭部の毛髪 | ナイロンなどの合成繊維 |
| 拒絶反応 | 自身の組織のため起こりにくい | 合成繊維により痛みや出血などの異物反応の可能性 |
| 効果の持続性 | ヘアサイクルに従い生え変わる | 経年変化があるため定期的なメンテナンスや追加の施術が必要 |
| 仕上がりの自然さ | 元から生えている髪質と馴染みやすい | 素材による質感の差異が生じる場合ある |
| ガイドラインでの推奨度 | 推奨度B(行うよう勧める) | 推奨度D(行うべきではない) |
植毛と育毛・発毛・増毛の違い
薄毛対策では「植毛」のほかにも「育毛」「発毛」「増毛」という言葉がよく用いられます。一見同じような言葉に思えますが、それぞれ目的や方法が異なります。
育毛は、現在生えている髪の毛を健やかに育むことです。育毛剤などによって保湿し頭皮環境を整え、今ある髪の毛の維持を目指します。
発毛は、新たな髪の毛を増やすことを指します。AGA治療ではフィナステリドやデュタステリドなどの治療薬によって薄毛の進行を抑えたり、ミノキシジルによって発毛を促します。
増毛は、現在生えている髪の毛に人毛や人工毛などを結び付けたり、髪の毛が生えたように見えるシートを使用して、髪のボリュームを増やす方法です。
一方、植毛は毛髪を薄毛が気になる部分へ移植する方法であり、外科的な施術を伴います。
このように植毛は毛髪そのものを移植する方法、育毛は今ある髪を健やかに保つためのケア、発毛は髪の毛が生えるよう促す治療、増毛は髪の毛が増えたように見せる方法と整理できます。それぞれ目的や方法が異なるため、薄毛の状態や希望する仕上がりなどに応じて自分に合った方法を検討しましょう。
自毛植毛の特徴

自毛植毛とは、主に後頭部や側頭部などから自分の毛髪を採取し、薄毛や脱毛が気になる部分へ移植する治療法です。
AGAでは前頭部や頭頂部の毛髪が薄くなりやすい一方、後頭部や側頭部の毛髪はAGAの影響を受けにくいとされています。こうした性質を持つ毛髪を移植することで、移植先でも毛髪が成長することが期待できます。
髪の毛は1本ずつ生えているとは限らず、2〜数本の毛髪がまとまって生えていることが多いです。この毛髪と毛包などを含むひとまとまりの組織を「グラフト(株)」と呼び、自毛植毛ではこのグラフト単位で採取・移植するのが基本です。
自然な仕上がりになりやすい
自毛植毛では自分自身の毛髪を使用するため、生着した毛髪の流れや角度、密度などを考慮してデザインすることで周囲の毛髪と馴染みやすいです。
また、移植後に毛髪が成長すると既存の髪の毛と同じようにカットやスタイリング、カラーなどを行えることも特徴です。
長期的な維持が期待できる
自毛植毛では、髪の毛そのものだけではなく毛髪を生み出す毛包を含む組織を移植します。移植した毛包が生着すると、その後もヘアサイクルに従って毛髪の成長が期待できます。
ただし、植毛は薄毛の進行そのものを止める治療ではありません。移植していない既存の毛髪はAGAなどの影響によって薄くなる可能性があるため、必要に応じて継続的な治療が検討されます。
拒絶反応が起こりにくい
自毛植毛では本人の毛髪や組織を移植するため、人工毛植毛などと比べて異物に対する拒絶反応や炎症が起こりにくいとされています。
そういった安全性の高さから、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」では、自毛植毛は「推奨度B(行うよう勧める)」とされています。
参考:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
髪が生えていない部分にも移植できる
自毛植毛は、薄毛によって毛髪が細くなった部分だけでなく、髪の毛が生えていない部分にも移植できる場合があります。AGAによる生え際の後退や頭頂部の薄毛に加え、外傷や火傷などによって毛髪が失われた部分が対象となることもあります。
ただし、頭皮の状態によっては術後に髪の毛が十分に生着せず抜け落ちる可能性があります。そのため、髪が生えていない箇所があることや、その原因などを事前に医師へ伝えたうえで治療の効果を実感できるかどうかを確認するようにしましょう。
移植できる毛髪には限りがある
自毛植毛は新しい毛髪を作り出す治療ではなく、自分の毛髪を別の場所へ移動させる治療です。そのため、移植に使用できる毛髪の量には限りがあります。
薄毛の範囲が広い場合や、後頭部・側頭部の毛髪が少ない場合には希望する密度を実現できないこともあります。
また、手術を伴うため、採取部や移植部に痛みや腫れ、赤みなどが生じたり、傷跡が残ったりする可能性があります。移植した毛髪が十分に生着せず、抜け落ちる場合もあります。
こうした手術に伴うリスクや移植できる毛髪の量には限りがあることを理解したうえで、治療を検討することが大切です。
植毛が適しているか判断するポイント
自毛植毛では、後頭部や側頭部などに移植に使用できる毛髪が十分にあることが重要です。また、薄毛の範囲や進行状況、希望する仕上がりなどによって、適した治療方法は異なります。
植毛を検討する際は、毛髪や頭皮の状態を診察してもらい、移植できる毛髪の量や期待できる仕上がり、手術に伴うリスクなどについて説明を受けましょう。そのうえで、自分に適した治療方法かどうかを判断することが大切です。
植毛の種類
現在の植毛で主流となっている自毛植毛には、毛髪の採取方法や移植方法によって複数の術式があります。
代表的な術式には、FUE法、FUT法、ニードル法(単一植毛法)などが挙げられます。術式によって、採取方法や移植方法、傷跡、ダウンタイムなどに違いがあります。
FUE法
FUE法は、専用の直径1mm前後の小さなパンチを使って、後頭部などから毛髪を含むグラフトを1株ずつくり抜いて採取する方法です。
頭皮を帯状に切り取る必要がないため、FUT法でみられる線状の傷跡が残りにくいことが特徴です。ただし、採取部には小さな点状の傷跡が残る場合があります。
また、グラフトを1株ずつ採取するため、移植する本数や施術内容によっては時間がかかる場合があります。
FUT法(ストリップ法・切開法)
FUT法は、後頭部などのドナー部位から頭皮を帯状に切り取り、その頭皮を細かく株分けしてグラフトを作成する方法です。
一度にまとまった量の毛髪を採取しやすいのが特徴ですが、頭皮を切開するため採取後には縫合を行います。そのため、後頭部に線状の傷跡が残る可能性があります。
ニードル法(単一植毛法)
ニードル法は、専用の細い植毛針を使用し、移植部分への穴あけとグラフトの植え込みを同時に行う方法です。
毛髪の角度や方向などを細かく調整しながら植え込めるため、生え際など繊細なデザインが求められる部分への移植に用いられることがあります。
ただし、1株ずつ植え込むため施術に時間がかかりやすく、広範囲への大量移植には適さない場合があります。
その他の植毛方法
植毛には、FUE法やFUT法などが確立される以前から、パンチ・グラフト、ミニ・グラフト、マイクロ・グラフトなど、さまざまな方法が考案されてきました。これらは採取するグラフトの大きさや毛髪の本数を調整することで、より自然な仕上がりを目指して改良されてきた術式です。
また、近年では植毛専用のロボットや機器を採取工程に利用する方法もあります。医師が毛髪の向きや角度、密度などをチェックしたうえでロボットにより採取を行い、採取した毛髪は手作業で植え込みます。
人工毛植毛の特徴

人工毛植毛とは、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維で作られた人工毛を頭皮に植え込む方法です。自毛植毛のように自身の毛髪を採取する必要がないため、希望する本数や長さを設定しやすく、施術直後からボリュームアップを実感しやすい点が特徴です。また、合成繊維の毛髪だと大量生産が出来るため、広範囲な脱毛に対しても植毛が可能です。
一方で、人工毛は自分の髪の毛のように伸びたり、生え替わったりすることはありません。そのため、状態を維持するために定期的なメンテナンスや追加施術が必要になる場合があります。
また、人工物を頭皮に植え込むため、身体が異物として認識し、炎症や拒絶反応などのトラブルが起こる可能性があります。拒絶反応により人工毛が抜けた場合も自然に再生することはありません。
さらに、自毛とは色や太さ、手触りなどが異なることから、仕上がりに違和感が生じる場合もあります。
こうした特徴から、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」では、人工毛植毛の推奨度は「D(行うべきではない)」とされています。また、アメリカではそのリスクの高さから法律により人工毛を使用した植毛が禁止されており、日本国内でも人工毛植毛を行っている医療機関はほとんどありません。
植毛費用について
植毛にかかる費用は、手術する範囲や移植する毛髪の本数、選択する術式などによって異なります。一般的に、移植する本数が多くなるほど施術範囲も広くなり、費用も高くなる傾向があります。
植毛は基本的に自由診療となるため、健康保険は適用されません。また、自由診療では医療機関ごとに料金設定が異なるため、同じ術式や移植本数でも支払う金額に差が生じることがあります。
植毛費用の内訳
植毛の料金は、移植する毛髪の本数を基準に設定されていることが多く、「1グラフトあたり○円」のように料金が決められている場合があります。
また、施術費だけでなく診察費や麻酔代、薬代、術後のケアにかかる費用などが料金に含まれているかどうかも医療機関によって異なります。そのため、料金を比較する際は、表示されている施術費だけで判断せず、確認することが大切です。
術式によっても費用は異なる
自毛植毛にはFUE法やFUT法、ニードル法など複数の術式があり、それぞれ毛髪の採取方法や移植方法が異なります。こうした施術内容の違いが、料金にも影響する場合があります。
ただし、同じ術式でも移植する毛髪の本数や料金体系によって支払う金額は変わります。
植毛手術の流れ
自毛植毛の手術は、一般的に「カウンセリング・診察」「デザイン・準備」「麻酔」「毛髪の採取」「移植」「術後のケア」という流れで行われます。具体的な手順や使用する器具などは、術式やクリニックによって異なる場合があります。
1. カウンセリング・診察
薄毛の進行状況や頭皮の状態、後頭部などのドナー部(移植毛を採取する部分)の毛髪量を医師による診察で確認します。また希望する仕上がりなども踏まえ、適した術式や移植に必要なグラフト数を検討します。
2. デザイン・手術の準備
手術当日、手術室にて生え際や移植する範囲をマーキングします。顔の輪郭や年齢、将来的な薄毛の進行などを考慮し、移植デザインを決めます。
3. 麻酔
手術中の痛みを抑えるため、毛髪を採取する部分と移植する部分に局所麻酔を行います。麻酔薬を注射する際に痛みを感じることがありますが、麻酔が効いた後は手術中の痛みが抑えられるのが一般的です。
4. 毛髪(グラフト)の採取
麻酔が効いたら、後頭部などのドナー部から移植する毛髪を採取します。FUE法ではグラフトを1株ずつくり抜き、FUT法では頭皮を帯状に採取します。このフローは株を傷つけないように素早く行います。
5. 移植部のホール作成・グラフトの移植
移植する部分にグラフトを植え込むための小さな穴を作成し、採取したグラフトを1株ずつ移植します。自然な仕上がりを目指すため、既存の毛髪の流れや角度、密度などを考慮します。
6. 術後のケア
すべての移植が完了したら、採取部や移植部に対し消毒やガーゼや包帯で保護をし、術後の過ごし方や洗髪方法、処方される薬の服用方法などについて説明を受けます。
自毛植毛は日帰りで行われることが多く、術後の状態を確認したうえで帰宅できます。術後は医師の指示に従って頭皮をケアし、定期的な診察などを受けながら経過を確認していきます。
植毛後の経過
自毛植毛は施術直後からすぐに髪に変化があるわけではなく、時間の経過とともに移植した毛髪が成長していきます。また、術後しばらくすると一時的に毛髪が抜けることがあります。
以下では、自毛植毛を受けたあとの一般的な経過を時系列で紹介します。
施術直後~1週間程度
施術直後は、移植した部分の毛髪に大きな変化は見られない一方、頭皮に赤みや腫れ、かさぶたなどの違和感が生じることがあります。
移植したグラフトもまだ安定していないため、術後しばらくは頭皮への強い刺激を避けることが大切です。洗髪や入浴、運動などを再開する時期については、施術を受けた医療機関の指示に従いましょう。
術後1~2か月程度
この時期には、移植した毛髪が一時的に抜けることがあります。また、移植部周辺に生えていた既存の毛髪が一時的に抜ける「ショックロス」が起こる場合もあります。これは手術の麻酔や頭皮へのダメージによってヘアサイクルが一時的に休止期に移行するために起こる自然な反応です。
術後3~6か月程度
一時的に抜け落ちた毛髪に代わり、移植した毛髪が徐々に生え始めます。はじめは細く短い毛が生えることがありますが、時間の経過とともに少しずつ成長していきます。
髪の生え方や成長の速度には個人差があるため、この時期は経過を見ながら過ごすことが大切です。
術後6か月~1年程度
移植した毛髪が徐々に長くなり、ボリュームや見た目の変化を実感できる長さまで伸びます。
自毛植毛では、最終的な仕上がりがわかるまでに1年程度かかることがあります。
植毛で失敗しないためには?
植毛で後悔しないためには、施術を受ける前に自分の薄毛の状態や希望に合った治療方法かどうかを確認することが重要です。
①医師の経験や症例
植毛では、毛髪の採取や移植する角度・密度などによって仕上がりが左右されるため、施術を担当する医師の経験や症例を確認しておくとよいでしょう。症例写真などを見る場合は、自然な仕上がりになっているか、自分が希望する仕上がりに近いかなどを確認しておくと安心です。
②自分の状態に適した術式
薄毛の範囲や頭皮の状態、希望する仕上がり、傷跡への考え方などは人によって異なります。FUE法やFUT法など、術式によって毛髪の採取方法や傷跡の残り方などが異なるため、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて説明を受け、自分の状態に適した方法かどうかを検討しましょう。
③施術前に費用を確認する
植毛では、移植する毛髪の本数や術式などによって支払う金額が変わります。施術を決める前に見積もりを確認し、提示された金額でどこまでの費用が含まれているのかを把握しておきましょう。また、追加費用が発生する可能性や、保証制度が設けられている場合はその適用条件についても確認しておくことが大切です。費用の安さだけで判断せず、施術内容や術後のサポート体制なども含めて、納得できる医療機関を選びましょう。
④術後のサポート体制
植毛後に頭皮のトラブルなどが生じる可能性もあるため、術後の診察や経過観察など、どのようなサポートを受けられるのかを事前に確認しておくこともおすすめです。疑問や不安がある場合は、カウンセリングの際に確認し、十分に納得したうえで施術を検討しましょう。
植毛を検討したら医療機関に相談
ここまで植毛の仕組みや種類、費用、施術の流れ、術後の経過などについて解説しました。
植毛には自毛植毛や人工毛植毛などの方法があり、それぞれに特徴やメリット、注意点があります。薄毛の状態や移植できる毛髪の量、希望する仕上がりなどによって適した方法は異なります。
そのため、植毛を受けるかどうかを含め、まずは医療機関で自分の頭皮や毛髪の状態を診てもらうことが大切です。植毛以外の治療方法も含めて説明を受け、それぞれのメリットやリスクを理解したうえで、自分に合った治療方法を検討しましょう。
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植毛についてよくある質問
「植毛とは?」と気になった方のよくある質問をまとめました。






